A COLLECTION OF TANKA POEMS

うたの
記憶

日々の暮らし、家族への想い、
季節の移ろいを詠んだ
ウタ子の短歌作品集。

花柄のセーターを着て微笑むウタ子の水彩画
ウタ子

大空の
まん丸月に
心澄み
過ぎし昔の
思い出辿る

— ウタ子

遺された言葉を
そのまま未来へ

何気ない一日も、歌にすれば大切な記憶になる。

この場所には、ウタ子が綴った183首の短歌を、元のファイル名の順に収めています。原文の文字遣いや表記をできる限り大切にしました。

全183首

UTAKO TANKA COLLECTION

短歌集 1

23首 | 原典:ウタコ短歌集1.doc
01

花便り遅々と進まぬ寒き春
コート脱ぐ日を待ちわびる日々

02

雨の音聞きつつ眠る今宵また
昔を偲び友の顔・顔

03

結び文本の栞に忍ばせて
今は帰らぬ靖国の人

04

倖せになってくれよと結び文
ソット偲ばせ往きし人

05

八十路聞き眠れぬ夜の多かりて
深夜便聞く楽しみ覚え

06

大空のまん丸月に心澄み
過ぎし昔の思い出辿る

07

月の夜灯りを消してしみじみと
友と語らう過ぎし昔を

08

深夜便聞きつつ眠る事多く
真夜中ながる地震情報

09

合格を伝える孫のはずむ声
受話器の向う笑顔が浮ぶ

10

勉学に希望を燃やしシリア迄
一人旅立つ孫の背大きく

11

オルゴール裏に書かれし亡き祖父の
想いを知りし二十才の今に

12

夫逝きて三年の日すぎやっと今
己が楽しむ途見出して

13

今日からは習いはじめしこの歌に
心の丈を素直に讀もう

14

受験生なくなりし今まだくせで
新聞開き倍率を見る

15

一年はアットいう間に過ぎるから
体大事に待てと言う孫

16

送り来し野菜を包む新聞の
ふる里の記事胸おどり讀む

17

子供・孫集い来て泣き笑いつつ
夫の生前偲ぶ三回忌

18

夫逝きて三年の日々の一人居を
安らぎくらす今日の幸せ

19

亡き祖父の熱き思いのメッセージ
ひな段の脇オルゴール裏

20

空港で目と目が合ったその時に
三十年の空白うまる

21

初ものと磯の香つめて夫の友
送り来たりし夫亡き今も

22

初孫のエンゲージリング選ぶ日は
嬉しくもあり尚淋しくも

23

夜十一時携帯メール鳴りひびく
時差あるシリア孫の日課で

UTAKO TANKA COLLECTION

短歌集 2

32首 | 原典:ウタコ短歌集2.doc
01

子を亡くす辛い思いは吾も又
覚えがありて胸は痛みぬ

02

三十七年過ぎし今なれど
尾瀬にて逝きし娘忘られず

03

六十年経し今墓前尋ね来て
戦の海に散りしを無念

04

あの戦無ければ君は今ここに
眠る事なく居られしものを

05

孫娘編物習い熱心に
編目を拾う手先が可憐

06

浅き春娘二人に連れられて
善光寺参り信濃路の旅

07

杏咲く信濃の朝は春霞み
煙りて遠くアルプスの峰

08

学業に励む傍ら国一の
受験目指して頑張る孫は

09

戦なき世の続かれむ事願い
君の墓前を去りし夕暮

10

もしかしてもしかしたらと淡き夢
抱きて生きて六十余年

11

覚悟しておりしつもりも現実を
知りて希望が無くなり寂し

12

靖国に眠れる君は吾呼べど
答うる言葉なくて哀しき

13

夜勤明け受話器の向こうに孫の声
会話弾みて一日楽し

14

手首折りギブスはめられ動けなく
元気に過す有難さ知る

15

亡き夫の遺作となりし陶器鉢
好みし竹を育ててみよう

16

倖せになってくれよと結び文
ソット偲ばせ逝きし人

17

空梅雨に雨がほしいと紫陽花が
嘆くかのようにうなだれている

18

水芭蕉尾瀬への旅に誘う友
尾瀬にて逝きし娘ある知らず

19

夜九時の携帯短歌若い子の
恋の歌聞き胸おどりたり

20

君のもときっと帰ると往きし人
約束破り帰らぬ人に

21

今日もまた吾を案じてベルが鳴る
従妹の日課長距離電話

22

あれ食べよこれが体に良いからと
人伝聞いて教え来る従妹

23

子を思う親の如くに旬のもの
送りてくれる従妹の家族

24

人の世は海原の小舟なり
説かれし言葉八十路に解けむ

25

半月に向かいてソットつぶやきぬ
帰らぬ人にどうしてなのと

26

思いやる心を知りし言の葉に
孫の成長知りて嬉しき

27

青春を切磋琢磨の日が送れ
幸せな孫良き友多く

28

プロゼクトX見ては吾も又
かくあらねばと夢燃やす孫

29

人の為つくせる事は幸せと
教えられにし小五の恩師

30

数々の想いを乗せて闇の中
走る列車の窓は明るく

31

啄木の墓に参りて涙せり
苦労多かりみじかき命

32

娘を亡くし悲しむ母の歌讀みて
胸張り裂ける思いにからる

UTAKO TANKA COLLECTION

短歌集 3

32首 | 原典:ウタコ短歌集3.doc
01

爺ちゃんに買ってもらった印押して
婚姻届け済ましたと孫

02

牧師さん二人に問うた一言に
イエスと答う若き二人は

03

ハネムーン帰りて話すモルジブの
もぐりし海のその雄大さ

04

新しき人加えての正月は
より賑やかに三ヶ日過ぎ

05

亡き夫にごめんなさいと詫びながら
初恋の人の墓前に参る

06

娘孫連れだち行きし墓参り
中央高速ひた走り行く

07

四月には花の絨毯敷きつめて
八月今日は桃紅く熟れ

08

顔合せ只涙する従姉なる
ホームに暮らし二十余年

09

末孫の成人式の晴れ姿
まばゆい程に美しくあり

10

末孫の振袖姿一目でも今なき祖父に
見せてあげたし

11

初孫の結婚式と末孫の
成人式と佳き事続き

12

この佳き日見る事なくて逝きし夫
想いて涙頬を伝わる

13

又来るね見つめ合せた目と目とが
涙にぬれるホーム去る時

14

夏休みオーストラリヤに学ぶ孫
メールに託す日々の出来事

15

生き甲斐は何と問われて答うるは
孫の成長見る事のみと

16

校庭に喜寿の記念と植樹せし
百日紅咲くと友の便りに

17

蝉しぐれ七日でなくす命とは
余りに無情哀れさ覚え

18

初孫の結婚式の招待状
手にして何故か涙あふれる

19

初孫の結婚式の近づきて
寂しさ先で喜び後に

20

嫁ぎゆく孫ではなくて嫁迎う
孫なのに何故この寂しさは

21

雨の日の続く日毎は本讀みて
過す時間の多くて楽し

22

図書館で借りて讀む本時々は
何時か借り来て讀んだ事あり

23

この個所は孫に残しておきたいと
コピーを取りて文箱の中に

24

寝ながらの讀書の辛さ愚痴こぼす
孫から届く讀書スタンド

25

我が娘嫁がす時の寂しさは
覚え無くして何故今孫で

26

教授より絶賛されて嬉しくて
長いメールで知らせ来る孫

27

背中から祖父の温り感ずると
形見の丹前羽織りて机に

28

こんなにも良い子に育つ孫達を
見る事なくて逝きし夫哀れ

29

送られし讀書スタンド快適と
孫に感謝のメールを送る

30

雨音に空きの気配が胸を刺す
コオロギの声尚哀しけり

31

雨降りは好きだと言った幼友
今は亡き人想い出だけが

32

晩秋の夕暮れの空星一つ
強く輝く火星と知りし

UTAKO TANKA COLLECTION

短歌集 4

32首 | 原典:ウタコ短歌集4.doc
01

靖国の桜咲いたと九段下
住む従妹より花見の誘い

02

花見時賑わい過ぎる九段下
千鳥ヶ淵に葉桜楽しむ

03

夫逝きて四年の日々を振り返り
事無く送れし日を感謝する

04

みどりの日娘と孫と訪れ来
想い出語る夫の命日

05

孫の為生きているのだと口癖に
言いたる祖父を恋うる孫達

06

この姿見た時祖父はどんな顔
その顔思いみんなで涙

07

泣き虫の揃った我が家事々に
うれしくも泣き悲しくも泣く

08

近々に同級会があるらしと
友の賀状に心躍りぬ

09

怪我をして一年たちし今日なれど
まだまだ癒えぬ歯がゆさしきり

10

一年にこんなに老は進むかと
日毎夜毎の仕草に思う

11

去年まで何なく出来し事なのに
上手く出来ずに失敗つづき

12

一人居の淋しさ不安覚ゆ日の
ありたる時も無き事もなし

13

五k減り三十五kぎりぎりと
賀状に添書く友案じTEL

14

今日も又友集い来てお茶飲みの
時を送りし我が家はサロン

15

二十五日初天神の声を聞き
孫と参りし年思い出す

16

志望校一ぱい書いた絵馬奉じ
柏手打って真顔で拝む

17

三年前天神参りせし孫も
就職の声聞く年となり

18

春立つと暦の上に告げらるも
今日の寒さは未だ春遠く

19

何でまた同じ本等借りて来る
あんなにたくさんある本の中

20

本読めて字の書ける事幸せと
教えてくれし全盲の友

21

眼の見えぬ変わりに人の心おば
肌で感じるめしいの友は

22

たわむれにパソコン開き驚きぬ
作品生きて亡き夫の名が

23

こんなにも祖父の作品愛でくれる
人がいるならHPをと孫

24

孫達が力合わせてパソコンに
思いで込めて亡き祖父のHP

25

眼の見えぬ友と語らう一時は
吾の幸せひしひし感じ

26

見えぬ眼に人の心の奥底が
見えてる様に涙で光る

27

筋トレと名付けて通う週二日
若き人らに若さもらいに

28

筋トレを続けて三月気のせいか
背すじ少しは伸びたよな気が

29

数々の思いを乗せて闇の中
走る列車の窓は明るく

30

ホーホケキヨ初音は春の訪れを
告げるかのよに鶯の声

31

水仙にフリージヤにと春知りて
今朝アイリスが咲き初夏覚ゆ

32

散る花の風情楽しむ事出来ず
春の嵐に散りゆく桜

UTAKO TANKA COLLECTION

短歌集 5

32首 | 原典:ウタコ短歌集5.doc
01

夏休み孫はひたすら夢願い
社会勉強余念なく励む

02

孫達の将来見たく思うけど
そんなに永く生きる不安も

03

永年をホーム暮らす友尋ね
逢うは嬉しく別れがつらく

04

「ただいま」と玄関開けて誰に言う
一人住まいを忘れた日々に

05

誰かしら尋ねてくれる孫五人
その都度何かうれしき事が

06

来春の卒業なのに早々と
就職きまりホット一息

07

孫達もみんな進路を選ぶ時期
それぞれ思い婆々にも告げて

08

筋トレで体動かす楽しさを
覚えて通うエクササイズに

09

駅前で友を待つ間に若き日の
待合せ時のフィルムが浮び

10

若き日に友と語りし事ありき
駅の灯りの寂しき様を

11

暑さにも負けずに咲いた百日紅
それにも負けじと蝉の音しげく

12

蝉しぐれ昼は烈しく聞こえしが
夜には秋を告ぐ虫の声

13

逝きし娘の愛した花の一つなり
都忘れの咲く庭に立つ

14

仏壇の中の写真は未だ二十才
還暦近き姿浮かばず

15

孫娘時代小説にはまり込み
古本探して買い込んで来る

16

時代物讀んでわからぬ言葉あり
メールに託し聞いてくる孫

17

孫の問いわれも解らぬ事多く
戸惑うことの多さに恥じる

18

亡き夫に子守歌のよに毎夜毎
歴史の話聞かされし孫

19

その話続きは明日と言い聞かせ
添寝の時も今は思い出

20

爺ちゃんに歴史の話子守歌
代わりに聞いて今歴史好き

21

肩はこり目もつかれ来て思わずに
本をなげ出し長々と寝る

22

村はなれ都会に暮らす幾年を
あかねの歌集に故郷忍ぶ

23

内定は多社取りてあり八月末
第一志望の発表を待つ

24

週二日通う体操教室は
友達増やす場となりにけり

25

今ならば俺達やっと爺ちゃんの
話相手になれたのにと孫

26

こんな婆々進路相談してくれる
何の役にも立たずも嬉し

27

救急車我が家の前に停まりしと
我を案じて友四・五人も

28

従妹より取り立て蕨送りくる
山菜おこわ炊いてふるまう

29

たち葵天辺迄に咲ききって
梅雨の終わりの近きを覚ゆ

30

半月は静かな光放しつつ
中天の空静かに浮かぶ

31

中天に静かに光る半月に
去年逝きし友浮かびては消え

32

孫達に幸多かれと短冊に
託して願う七夕飾り

UTAKO TANKA COLLECTION

短歌集 6

32首 | 原典:ウタコ短歌集6.doc
01

退院を知りし友等日替りに
朝な夕なに食運び来る

02

スープ炊きおかず作りて朝夕に
届けてくれる友あり嬉し

03

友の背に何時の日にかはこの情
返すからねと心に誓う

04

病気して人の情にふれてみて
生きる倖せ愛せれる事

05

月二回通う医院の窓辺には
その節々の美しき花

06

あの友が又この友が入院と
聞きにし日には胸痛みたり

07

今日も又無事に過ごせし有難さ
ジットかみしめ感謝する夜

08

散る落葉表に裏に色違え
吹く木枯しにからころの音

09

父母も逝き夫も亡くした悲しみも
知りしが逝きし娘尚悲し

10

病室で九月にはパパとなる事
告げる初孫顔いきいきと

11

年一度花見よそおい靖国へ
逝きにし君へ声掛けに行く

12

声掛けど答うる言葉なくさみし
桜の花の下に立ちしも

13

大銀杏色付き初めて秋覚え
散り行く様に行く秋惜しむ

14

十五夜は雨で見られず十六夜の
月を眺めて物思う夜

15

温泉の帰りの車窓中天に
十三夜の月煌々と輝る

16

月を見て物思う事楽しむは
娘逝きての後の慣わし

17

鈴本に落語を聞きに孫と行き
倖せしみる帰りの電車

18

末孫はまだ一年の学業を
残していての就活に入り

19

ひたすらに胸ふくらませ就活に
パソコン開き探し求める

20

アルバイトオックスフォード大学の
出版社に外資の良さ知る

21

吾思い九十五才の従姉婆
嫁に内緒と物送り来る

22

四月から社会人だと胸を張る
二人の孫の顔はればれと

23

八十路まで病知らずに生きて来た
ありがたさ知る病に臥して

24

我が病案じて従妹己が身の
病めるも忘れ見舞ってくれる

25

就職は外資望むも新卒は
採用無しと落胆の孫

26

孫達は自由自在のパソコンが
私は使えず埃まみれに

27

目残しの柿の実つつく百舌鳥一羽
花火の音に驚きて飛び

28

落ち葉掃き堆肥とならぬ銀杏の葉
厄介者と邪魔にされて

29

婆々が病み案ずる孫は氏神に
参りて守り受けてきてくれ

30

我が病娘も孫もこんなにも
案じてくれる心根嬉し

31

日替りに顔見にきたと孫五人
見舞ってくれて元気を貰う

32

千羽鶴折りて病の枕辺に
快復願い掛けてくれし友

AFTERWORD

言葉は、時を越えて。

遺された一首一首が、これからも家族の記憶をそっとつないでいきます。